翻訳者として活動するうえで最も重要なことは「翻訳対象を深く理解すること」です。
翻訳者というのは単に英語を正確に日本語に訳すだけの仕事ではありません。翻訳対象の原文が何を言おうとしているのかを理解できなければ、正確な日本語表現など不可能です。文法的には正しくても翻訳としては不十分、ということは珍しくありません。重要なのは何が書かれているのかではなく、原文の作者は一体何を伝えた湫この文章を書いたのかを理解することです。
言葉の意味の正確な理解は翻訳の基本ですが、単語に込められた意味が一つとは限りません。比喩表現や文化的背景に基づく言い回しなどは単に単語の意味を理解しているだけでは正確に翻訳することは不可能です。単語そのものの意味はもちろん文章の前後関係やその文章が書かれた目的、作者の性格や時代背景なども翻訳には大きく影響します。原文となる英語の文章を単体でとらえるのではなく、原文がどのような目的でなぜ書かれたのかということまで理解しなければ質の高い翻訳を実行することはできません。
翻訳という作業は辞書と時間さえあれば誰にでもできます。翻訳者に求められるのは仕事の質とスピードであり、単なる正確さだけではありません。正確な翻訳をすることは仕事の大前提で、そのうえでどれだけ作者の意図を組んだ翻訳を成し遂げられるかによって翻訳者としてのレベルが問われます。
翻訳者が知識をひけらかすのは論外です。読む人に作者の気持ちが伝わるような文章を完成させようという気持ちが無ければ翻訳者の仕事は勤まりせん。